2023年8月 3日 (木)

計量テキスト分析による《新自由主義》の共起〜媒体ごとの40年間変遷

タイトル

計量テキスト分析による《新自由主義》の共起〜媒体ごとの40年間変遷

 

著 者

小峯 敦[1]

 

概 要

本稿は主に4種類(学術系・新聞系・議会系・世俗系)のデータベースを用いて、3つの論点(1-4)を含むように、《新自由主義》に関する計量テキスト分析を行った。ただし、本稿は今後の本格的な研究に備えた予備的考察である。

左古(2021)の検証については、その結論をおおむね肯定できる結果となった。本稿はここを出発点として、多くの異なるデータベースで同一キーワードの検索をかけ、大量のデータを収集した。その結果、新聞系媒体がデータ収集に関して、もっとも安定的で好ましいと判明した。安定的という意味は、約40年間に渡って多くの情報を含んだデジタル記事を容易に入手できるということである。このため、時系列や媒体別の比較が容易となる。

それに対して、議会系メディアは(国会を除けば)まだ期間が短く、網羅的でもない。横断的な検索・収集もかなり難しい。このため、個別議会は別として、集計的な観点からこのメディアを用いるのは、困難を伴う。

左古(2021)が抽出しようとした《新自由主義》の多義的な内容に関しては、今回はほとんど析出できなかった。「学界の外では、多様な理解は進んでいない」という結論も可能であるが、ここでは《新自由主義》のハーヴェイ的理解、フーコー的理解がマスメディアで、議会で、一般の人々に、どの程度に浸透しているかについては、本稿の分析手法・媒体選択を踏まえた将来の課題となる。

 

キーワード

新自由主義、ネオリベラリズム、テキストマイニング、KH Coder、ハイエク的理解、ハーヴェイ的理解、フーコー的理解、新聞系データベース、議会議事録

 

 

JEL classification

B20, B40, B59, C00, C80

 

[1] 龍谷大学経済学部。

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2022年9月23日 (金)

「新しい資本主義論」の勃興〜その構造変化、環境負荷、「脱資本主義論」を参照して

概 要

 本稿は2010年代以降、急速に流布されている「新しい資本主義論」について、「脱資本主義論」と対比させる形で、文献紹介を兼ねながら、その鍵となる概念や原文を紹介する。取り上げられる文献は、ほとんどアングロサクソンの両国と日本で出版され、知名度・影響力を持つ文献である。

 資本主義の未来について、政権の内部にいた者からビジネス・スクールの著名講師陣まで、現状認識はほぼ一致している。すなわち、資本主義が内包する欠点により、金融部門に富が集中するなど格差が拡大し、気候変動への対応が大きく遅れ、政治的腐敗や特権身分の固定化が解消できない。市場機構の要である価格シグナルはソフト化・ネットワーク化・デジタル化・外部経済の巨大化によって、これまで通りでは機能しない。所有権も、シェア経済やコピー経済のために、その絶対視は不可能になった。

「新しい資本主義論」は《市場経済》が本来は持つ利点を十全に引き出し、希望的な未来を明確に構想している。そこには意識の変化と組織の変化を必要とする。前者は例えば、公共目的が構成員に明確に共有され、地域的・倫理的・包括的・環境志向的な意識となる。後者は例えば、分散型・水平的な関係であり、オープンで透明な参加権を持つ組織である。このような変革は、もはや「市場vs政府」という単純な二分法では捉えられない。他方、市場機能に懐疑的なために、その強い規制(もしくは廃止)を謳う「脱資本主義論」は、斎藤(2020)を例外として、具体的な未来像が見えにくいという特色を持つ。

「新しい資本主義論」は総じて楽観的であるが、それは主に、デカップリング(経済成長と環境負荷の切り離し)への信頼、および際限ない価値増殖を止めうる市場機能への信頼に基づいている。

なお、本稿は多くの文献を追加し、DP 21-03を大幅に改訂した論考である。

 

キーワード

新しい資本主義論、岸田内閣、デカップリング、脱資本主義論、知識経済、限界費用ゼロ社会、無形資産、グリーン・ニューディール、監視資本主義、ドーナツ経済、ミッション・エコノミー、資本主義の暴走、希望の資本主義

 

JEL classification

A11, B10, B20, O10, P10

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2022年3月23日 (水)

山野弘樹2022 独学の思考法

山野 弘樹

独学の思考法 地頭を鍛える「考える技術」

講談社現代新書

 

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000364110

 

47)5つの技術。問いを立てる。差別意識を含まない。早い段階で答えが出ない問い。

68)チャンクchunk まとまり。塊。情報のまとまり。分節(化)する力。

90)情報の海から、チャンクを整理蒐集する力。要約する力:集められたチャンクを用いて、ロジックを再現する力。

 

101)論証する力。構成されたロジックを掲げて、議論を作る力。他者から抽出された要約。自己の側から抽出された推論。両者のバランスで議論を構成。

 

122)物語化する力。人に伝える。

130)相関図は空間的な図解。物語化の手段として、映像化(時間的な図解)=語りによって喚起された想像上のイメージ。

 

132)スタート地点=掴み(物語に引き込む出だし)。ゴール地点=オチ(相手が満足する〆のタイミング)。両者によって物語の輪郭をはっきりさせる。

134)山場=物語の閉塞状態が打破される前の段階。

136)物語の尺を変更する。骨子を正確に理解しているかどうか。

 

137)物語力;自己反省的、自らの思考のモレを発見。他者志向的;聞き手を意識した図解。

138)最も具体的な仕方で言い換えられる技術=物語力。

 

167charitable reading:寛大な読み。相手の議論がより完全になるように、支援するように読む。

168)相手の議論が一面の真理を突いていると仮定。

174)教示でも誘導でもなく、相互補助。(ナッジは誘導)

176)話の軸となる単語をメモ。

 

チャンク、分節する力、物語化する力、チャリタブル・リーディング という単語が気になったので、購入。なかなかタメになる。

 

しかし、「分節する」という表記よりは、「分節化する」の方が良いか。あるいは、文節化する? また、参考文献一覧はやはり入れて欲しい(特に編集部へ注文)。典拠こそがフェイクニュースへの抑止力となる。論破するよりは、支援するということが前面に出ており、それも時代の流れとだろう。

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2021年8月25日 (水)

JSTOR

https://www.jstor.org

 

JSTORでテキストマイニングが可能になっている。

https://about.jstor.org/whats-in-jstor/text-mining-support/

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2020年9月22日 (火)

現代経済学の直観的方法

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000323019

 

ブルーバックスから、マクロとミクロの本が出ているのは知っていた。理系の人にもわかりやすく書いた指南本という雰囲気で、まあ買おうかなと思っていたのであった。

 

その後、今年になってこの本が出た。分厚い本であるが、単なる「これでわかるよ経済学!」といった類書ではなく、独学による理解がありそうだったので、買ってみた。「資本主義の本質をつかむ」と煽られていることもあったが、「第1章 資本主義はなぜ止まれないのか」という問いの立て方が、ハウツー本とは異なっていたからである。

 

資本主義は成長を続けなければいけないシステム。金利があるから(17)。戦争に必要なのは、鉄というよりも鉄道。いきなり最前線に兵と兵器を送り込める。資本主義では、この鉄道にあたるのが金融機関=資金輸送網。資本主義が必要とする大量の資金を、必要な場所に迅速に移動させられる(35)。

 

貯蓄という日常的な行為と、投資という途方もない行為(65)。これが事後的に一致することが、マクロ経済学を理解することの要諦。

 

イスラムの世界では利子は出てこない。借りた人だけにリスクを負わせるのではなく、投資に伴う不確実性を借り手と貸し手で分け合うから。確定した利子という概念はない(77)。

 

中世は金利をどう押さえ込むかという社会。金銭の力が社会を腐敗させないように押さえ込むように設計された高度な文明(80)。ソ連が崩壊したのは、経済効率が劣っていたからというよりも、軍事力を支えるミサイルとレーダーの能力=半導体産業 を国内で持たなかったから。ソ連は資本主義のマネーを軍事力で押さえ込もうとして失敗(81)。

 

現代社会が資本主義を手放せなくなっている3つの理由。①旧英国型:軍事力の維持。②アメリカ型:人々に夢を与えるため。③日本型:資本主義の列強から自国を守るため。 これからの社会設計は、この3つをクリアできないと空論(84)。

 

インフレでは機動力の高い人々が得をする。動きの鈍い人が損をする(110)。資産家は損。企業家は得。労働者は損(133)。同盟ゲーム:投資家、企業家、労働者のうち、2:1になるような思想あり。新しい経済学は、この3つの同盟関係を考慮する必要がある(221)。

 

ハッシュ関数:どんな桁数でも、同じ桁数の数字が出力される。その数字から元の数字を割り出せない。入力の数字をわずかに変えると、出力の数字は大きく変わる(329)。ビットコインは2100万ビットコインで停止するはず。現在は上限の85%ほど(353)。

 

仮想通貨は超大型機器タイプ、暗号資産はローカルな店舗(363)。ビットコインの本質は、電子の世界に絶対に増えない量の金=ゴールドを作ろうとすること(367)。

 

1970年代は地球温暖化よりも、はるかに石油など資源枯渇が重要だった。石油消費量について、当時の予測は外れたいたがなぜか(372)。

 

縮退という概念。中心部が栄えて量的に拡大したが、生態系として劣化している状態。一部にだけ巨大な資金が循環し、末端には資金が回らず、壊死している(376)。恐竜が滅亡する寸前、ティラノサウルスやトリケラトプスの二種が席巻。相互作用が適切なレベルにあることは、最初の状態では希。

 

縮退が進行して、稀少性の低い状態へ、この時に金銭的な得が発生(379)。人間の長期的願望は理想、短期的願望は欲望(382)。1960年代ほどまでは、資本主義の止まれない性質は、量的な拡大から。故に石油の消費量と比例。その後、質的な縮退から、その需要を満たす方向に変化(383)。

 

大きな勘違い。大勢の欲望を集めれば、長期的な願望に一致する(399)。ルソーの一般意思は長期的な願望=理想。全体意思は短期的な欲望。空気中の分子の相殺性では不適切な説明。むしろ天体力学が影響。太陽系(太陽のみが圧倒的な引力)のみに当てはまる議論。

 

楽観的な社会思想では、上下の二層のみを捉えているようだ(406)。三階層が良い。モンテスキューやケインズ。

 

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2020年8月27日 (木)

テスト

テストです。

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2019年1月 5日 (土)

社会学はどこから来てどこに行くのか

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641174412

「どこどこ」と約されるらしい。社会学の固有問題というよりは、社会科学の方法論としてどうなのか、という関心から買ってみた。社会学固有、というよりは、筆者固有の問題意識が多くあり、よくわからない部分も多かったが、逆に非常に参考になる部分も多かった。

例によって、読書記録なので抜粋。以下の表現は自分なりにアレンジしてあり、自分のまとめである。

第1章 社会学はどこから来たのか
《この答えがどこに書いてあるのか、よくわからないのだが・・・》

北田:どんな問題も理解できてしまう、時間軸を延ばすと。非合理性も機能主義的に理解できる。全体性を設定していない(49)。

第2章 社会学は何に悩み、何を伝えたいのか
第3章 社会学は何をすべきで、何ができるのか

岸:合理性とは何か。ここでは人間にとって普遍的で理解できること。個別ケースに拘って、記述して解釈している(103)。 特定の調査対象について、一般的なことを述べるために、合理性や機能やカテゴリーとか確率とか類型化などを使う(107)。当事者に寄り添う、物語性という重視は、対話的構築主義で、社会学よりも看護学、質的心理学で広がっている(122)。

岸:社会学が解散したとき、どこにも引き取り手がない部分は何か。それが社会学の中心。計量は経済学が、エスノグラフィーは人類学が、理論は哲学がそれぞれ引き取る(130)。

北田:社会学は公正や不正を扱う。比較は得意。他方、どうすれば良くなるかは弱い。成長のイメージがない(133)。

第4章 質的調査と量的調査は対話可能か

岸:社会学が質的と量的に二分されているというよりは、社会調査、参与観察

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2018年12月31日 (月)

ペーパレス時代の紙の価値

https://honto.jp/netstore/pd-book_29375957.html

久しぶりにこちらも更新。まとまった字数が必要なときは、twitterでは足りない。読書記録となる。

紙から電子メディアへの転換。定性的な意見ばかりで、科学的な視点が欠けていた(18)。ここで科学とは、3つのこと。第1は、ミクロ的な分析:目的と状況の特定。第2は、実験条件を統制する客観的なデータ取得。第3は、最終的な判断のための定量的な分析(19)。

《他の事情に等しければ、という部分均衡の思考法に似る。全体としての現象に接近できないか?》

紙には凹凸があり、吸水性と通気性があるために、書きやすさと長期保存が可能であった(29)。推敲や校正の場合、なぜ紙に出力した方が俯瞰して集中できるのか(41)。

見やすさの部分では既に電子メディアも優れている。しかし、ページめくりの部分で、ちょっとした操作g集中を妨げる。特に論文の場合、参考文献や注は後方にあり、本文との行き来が多くある。この場合に、電子メディアでは不利(67)。

複数の文書を同時閲覧する場合は、デュアル画面環境として、少数の大きな文書を表示する場合は、大画面環境を用いれば良い(84)。紙を持つ手の位置が、読み手の視線のガイドとなる。無意識のうち(92)。目次に指を挟んでいた(97)。

目当てのページの探し方。紙の場合は、付近まで一気に大胆にジャンプして、後で戻ったり、進めたり、柔軟な検索(104)。文書をなぞると、丁寧に読める。デジタル版ではなぞると、別の操作になる可能性もある(117)。

集中して読む場合、例えば試験の場合、右利きの人は文書を書面から少し左にずらして置いている。肘を中心とする回転運動では、指の移動は聞き手と反対方向に傾ける方が、テキストをなぞりやすい(121)。

刑事と手帳。PC機器を現場で導入したとこころ、手帳ではあった相手への円滑な意思疎通が、大幅に減少する。PCの画面ばかり見ているから(127)。

紙、タブレット、PCのうち、どれが議論を活性化するか。紙。PCは画面ばかり見る(129)。紙の利用は議論を活性化し、相手との作業文脈の共有を促進し、相手に配慮した議論を可能にする(132)。

紙は抽象的な情報を、触ることによって操作可能な具体性を持たせる(135)。読むことは、意識的に意味のまとまり、解釈を能動的に作り上げる過程(141)。

ハイパーテキスト(リンクを張って別の情報を誘う)はもともと、1945年に知能を増幅させる思考支援ツールとして開発された(145)。しかし期待通りになっていない。マルチタスクが集中力を妨げる働きをするから。授業中にPC閲覧を許す場合と許さない場合。許した場合に再生・再認の率が大きく落ちる。学生は関係ないサイトばかり見ていた。利用していない学生にも悪影響(150)。

紙の作業は抽象的に向く。電子環境では具体的に(154)。プロのデザイナーも最初は手書きを好む(183)。電子ツールでは、描く前に様々な意思決定を常に求められ、集中できない(185)。

筆跡学の発達。フランスでは企業の3分の1が、筆跡から得られた情報で人事配置や採用に利用(188)。

紙はエコに反するように見える。しかし製紙の原料は、古紙、パルプ(人口林材、低質材、古材など)でほとんど。自然林がパルプ生産のために伐採されることは少ない(204)。二酸化炭素を固定する若い木を植林してから切るのが温暖化の対策にも合理的(205)。

オフィスのCO2排出量は、空調30%、照明15%、コンセント15%。プリントなどはごくわずか。コンセントの中でもPCと自動販売機(206)。

理想のオフィスはpaperlessではなく、stockless。紙を一時的に使い、保存には用いない(231)。文脈を集中して掴めなくなるため、教育の全面的な電子化には懸念がある(239)。

《全体として、紙の有用さを定量的に実証している。しかし、デジタルを否定するのではなく、どの場面でどちらが有用かを今後もきちんと調べる必要があるというスタンス。紙かデジタルか、という単純な二分法にはならない。特にエコの観点から紙を見直すのは、常識を疑う点で新鮮。

紙の本、デジタルの本、それぞれに有用性がある。今まで自分が漠然と確信していたいくつかの論点を、明確な数値で跡づけている。》

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2018年6月11日 (月)

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2015年11月 2日 (月)

四大学対抗インカレ

2015.10.27
四大学対抗 インターカレッジ ゼミ発表会

日時:2015年10月31日(土)、11月1日(日)
場所:龍谷大学深草学舎・紫光館(深草別館)2F 201講義室
 〒612-8577 京都市伏見区深草塚本町67
(地下鉄烏丸線「くいな橋」駅下車、東へ徒歩5分、JR奈良線「稲荷」駅下車、南西へ徒歩15分、京阪電鉄「深草」駅下車、西へ徒歩10分)
 http://www.ryukoku.ac.jp/about/campus_traffic/traffic/t_fukakusa.html
 http://www.ryukoku.ac.jp/fukakusa.html
 (⑲の建物:国道24号竹田久保町交差点、「すき家」真向かい)
主管:龍谷大学・小峯ゼミ

参加ゼミ(教員を含む)61名
 江頭進ゼミ(小樽商科大学:学生12名、教員1名)
 廣瀬弘毅ゼミ(福井県立大学:学生12名、教員1名)
 池田幸弘ゼミ(慶應義塾大学:学生12名、教員1名)
 小峯敦ゼミ(龍谷大学:学生19名、教員1名)
コメント役:殷 莉妮、永井明日香(2名)

●1チームあたり持ち時間40分+入れ替え5分
(標準発表時間25分打ち切り、質疑応答15分程度)

■10月31日(土)
12:00 全員集合(ジャッジ打ち合わせなど、機器セッティング完了)

12:15 開会の辞(小峯)、採点の説明(コメント役)
12:30~13:10 【第1報告】小樽商科A「地域通貨TARCAプロジェクト」
13:15~13:55 【第2報告】龍谷A「日本も危ない!ギリシャ危機からの教訓」
14:00~14:40 【第3報告】福井県立A「人口問題」
(休憩)
14:55~15:35 【第4報告】慶應義塾A「YouTuber はなぜ儲かるのか?」
15:40~16:20 【第5報告】小樽商科B「NPO法人設立に関する発表」
(休憩)
16:35~17:15 【第6報告】龍谷B「どないしたん大阪! 大阪都構想の再考」
17:20~18:00 【第7報告】慶應義塾B「どうしたら彼女を作ることが出来るのか」

◎懇親会
酔心(京都駅前店、京都駅から徒歩5分) http://r.gnavi.co.jp/k844402/
  18:40〜20:40  懇親会(予算3000円) 主管:龍谷大学

 くいな橋駅必着(大学から徒歩5分)18:17or18:25 

■11月1日(日)
9:00 集合
9:15~9:55   【第8報告】福井県立B「女性の活躍」
10:00~10:40 【第9報告】小樽商科C「ケインズから見たアベノミクス」
                (休憩)
10:55~11:35 【第10報告】龍谷C「幸せについて本気出して考えてみた」
11:40~12:20 【第11報告】慶應義塾C「鉄道整備と慶應」
12:20~12:50  採点・講評(コメント役)、閉会の辞(江頭)
13:00     解散

(注意)両日とも昼食は用意されない。以上はすべて仮題。

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2015年7月31日 (金)

幼児教育の経済学

「幼児教育」が人生を変える、これだけの証拠
http://toyokeizai.net/articles/-/73546

幼児教育の経済学
http://store.toyokeizai.net/books/9784492314630/
ジェームズ・J・ヘックマン著/大竹 文雄 解説/古草 秀子 訳

「自発的選択によって生じる計測の歪みを修整する方法を開発した」ことにより、2000年にノーベル経済学賞を得た。そのヘックマンが効率と公平を両立させる社会政策として、幼児教育への公的関与を提唱した小書である。原題:Giving Kinds a Fair Chance, 2013

ヘックマンの主張の後に、様々な分野から10人の批判的コメントが収録され、さらにヘックマンの反論が添えられている。最後に、大竹 文雄教授(大阪大学)の解説が載っている。

以下、気がついた部分のみをメモしておく。

アメリカの不平等は拡大している。しかし適切な社会政策を施せば、技能労働者と単純労働者の分裂は阻止できる。適切な政策は、最善の科学的証拠によって裏付けられ、政策の利益と費用を換算して実行されなければならない(10)。

社会政策の策定には3つが必要。(1)認知的スキルだけでなく、非認知的スキル(肉体的な健康、精神的な健康、注意深さ、意欲、自信などの情動)も必要。

(2)アメリカでは過去40年間、家庭環境が悪化している。揃った両親や収入は二次的な問題であり、家庭の生活の質が根源的な問題。

(3)幼少期を焦点とした社会政策によって、問題の改善が可能。機会の平等と経済の発展が同時に実現できる(11-12)。

公教育は認知力テストを重視してきたが、人生の成功は別の要素もあることがわかってきた。意欲、長期的な計画を実行する力、他人との協働に必要な社会的・感情的制御(17)。

氏か育ちか、という論争。epigeneticsの発展によって、この二分法が時代遅れとわかる。両者は相互作用という最新研究(21)。

いくつかの観察結果あり。環境を変化させて、子供の重要なスキルを向上させることは可能(28)。ペリー就学前プロジェクト(29)。

幼少期への介入は、公平性と効率性の二律背反関係がほぼ存在しない。収益は費用を上回る。思春期以降の介入では、費用が高くなり、収益が低くなって、この二律背反が出てくる(35)。

介入プログラムの提供者に、民間セクターを参加させること。多種多様な視点から検討できる。民間と行政の共同作業によって、効果的で文化の違いに配慮する(37)。

費用。プログラムは全国一律とするが、費用は家庭の収入に応じてスライド制とする(38)。社会的スキルや性格的スキルは20代のはじめまで発展可能(39)。

再分配政策はある時点では確実に社会の不公平さを減少させるものの、長期的には、それ自体では社会的流動性や社会的包容力(他人を排除せずともに生きるという考え方)を向上させない、という研究がある(40)。

事前分配は、恵まれない子どもの幼少期の生活を改善すること。これは社会的包容力を向上させる。しかも経済的に効率的(40)。社会政策は適応性のある年少期を対象とせよ。家族の大切さ(42)。

●専門家のコメント

<1>ローズ:支持するが、2つのコメント。(1)成人向けプログラムにも注意を。統計分析と実体験の記録がどちらも必要。

(2)認知的スキルと非認知的スキルの二分法はやや危険。ハード(読み書き、数学など)とソフト(責任感、忍耐力、協働)は現実には混じり合っている。

ヘックマンの議論は政治理念の一部を避けている。問題の根本原因を避けている。

<2>ウェスト:有望だがいくつかの疑念がある。(1)一人親の逆境に注目していない。母親による子育てばかりに注目している。

(2)その提言が直面する政治的な困難さを理解していない。未婚女性、有色人種の女性、貧困層の女性をひとくくりにして、子育てに適していないと烙印を押している(55)。

<3>マレー:幼少期への介入について、データが信頼できない。サンプル数が少ない。実施と評価を分離した研究を(59)。

小規模の実験的努力は成果がある。しかし綿密な設計によって大規模に再現しようとすると、効果が薄くなる(62)。

<ドウェック>大賛成だが、誤解も招く部分がある。思春期の子供向けに、非認知的な要素を入れた安価で効果的な介入があるとしたらどうか(64)。

決め手となる要素を特定して、それに集中する必要がある。思春期にも効果あり(66)。

<デミング>すべての恵まれない子供にプログラムが届くことが重要(71)。

<マクラスキー>ヘックマンは正しいが、その効果の大きさやどのように測るかはまだ問題(73)。証拠として挙げられた2つのプロジェクトは、成果が実は小さい(76)。民間団体は単独で活動すべき。失敗すればすぐに手を引ける(78)。

<ラロー>ヘックマンは家族しか取り上げていないが、家族の接触する社会的機関も重要(79)。保育所、公立学校、社会福祉事務所、医療保険サービス、雇用主、警察、裁判所。不平等を生み出しているこうした社会的機関の役割を軽視しないこと(83)。

<アルマゴール>ヘックマンの議論には落胆。効果的なプログラムをつくるには何が必要かという観点が抜けている(85)。社会科学を研究する人は、この仕事に当たる。見返りではない(89)。

<スウィフト&ブルグハウス>説得力があるが、その実現には大きな壁がある。一部に介入するのではなく、全員に施策を提供すること(94)。悪い親だと烙印を押させない。

<カナダ>問題はカリキュラムではなく、将来の展望や政治的な意志が欠如していること(97)。考え方を変えるのが必要。

●再反論
厳密に評価されたプログラムのみを取り上げている。自発的に参加するものであり、烙印を押さない。親や子供に補足的な助けを提供する(108)。

●大竹解説
経済学は認知能力に限ってきた(110)。相対的貧困率:所得が低い方から順番に並べ、50%目の人の半分以下の所得しかない人の割合。16.1%。2000年代になって、貧困率は5歳未満となる。その親が貧困だから(120)。

資源は限られているから、他の社会政策と比べ、幼少への介入が効果あることを説明していく必要がある(123)。

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2015年7月29日 (水)

入門演習(1回生) 第15週

入門演習を含め、大学の講義・生活において発見したことを簡単に記してください。あるいは、夏休み以降どのように学習したいかでも構いません。

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2015年7月24日 (金)

入門演習(1回生) 第14週

「伝える」ことの難しさ、1分間スピーチの感想(主題)について、自由に述べて下さい。

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2015年7月15日 (水)

入門演習(1回生) 第13週

(1)本日のスポーツ大会の感想を。主にどんな貢献ができましたか。(2)来週の提出になる最終レポートの題材を記してください。

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2015年7月10日 (金)

経済思想史 第15回の予習

今までの授業を振り返り、もっとも気になった人物や出来事を1つ取り上げ、気になった理由を挙げなさい。

次に、その人物・出来事に関して文献を探し、図書館に行って実際に本を借りなさい。

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